Teploobmen’s diary

興味のあること、調べたことなど、雑多にまとめていきます。調べている内容の途中経過を書くこともあります。

「団塊の秋」

 先日、堺屋太一氏の小説、「段階の秋」を読了した。私は平成生まれなので団塊の世代というと祖父や祖母に近い年代の方々だが、彼らの生きてきた時代、観念、そして人生後半である今現在まさに直面している問題を知るのに、非常に有意義な一冊だった。

団塊の秋

団塊の秋

 

 

 

1.構成

 この小説は、2013年から見た、2015年から2028年に生きる「団塊の世代」の主人公たちの今、過去、そして未来を描いている。構成としては次の通りだ。

  1. 新聞記事
  2. 主人公らの今の生活
  3. 主人公らの回想(日本の絶頂期が中心)

 といった具合だ。新聞記事は、各章の初めに掲載され、各章の内容にある程度関係する。

  

2.経済情勢

 さて、堺屋太一氏は作家であると同時に経済評論家でもあるが、彼の面白いところは主人公たちの主観的な経済感覚だけでなく、全体的な経済事情も記しているところだろう。この本の中でも同様だ。以下にこの小説で触れられている経済情勢を時系列順に記す。

2013年 自民党圧勝。財政出動、金融緩和政策を始める。円安株高(ここまで事実)

 

同   ドル円120円越え。輸入物価急騰と消費税引き上げによるスタグフレーション

 

2014年 世界景気の鈍化。新興諸国による安値輸出攻勢。

 

2015年 財政支出の息切れ観測。設備投資縮小。正社員の減少と非正規雇用の拡大。年金受給年齢の引き上げが行われる。十代、二十代の失業率は20%近い。

 

2016年 日本国債暴落。信用収縮。衆議院選挙で野党が議席を伸ばすも、自公連立は存続

 

2020年 東京オリンピックパラリンピックを控えるも、高齢化・人口減でスポーツ熱は広がらず。そのうえプロ選手を目指す人物は中国・韓国へ流出。(中国・韓国が飛躍的に成長したため?)オリンピック選手に日本国籍を持つ外国人を加入させるようになる。

 

2022年 日本から仕事がなくなる。一部は正社員として残っている模様。このころから、日本の戦前の戦争行為への贖罪運動が広まる?

 

2025年 日本の起こした戦争行為が露頭。日本中が自虐気味になる。また、人口減から外国人労働者が警備員などとして雇われている。

 

2028年 日本の経済が上向き始める。章はじめの新聞記事中には「失われた30年」という表記がある。20歳未満の出産が増える。中年結婚・出産もブームに

 

 おい最後何があった。詳しくは触れられていないが、外国人の移住が増えている

 

 閑話休題。この小説から、堺屋太一氏は当時、2013年度中にスタグフレーションが起こり、日本の経済情勢は悪化すると予測していたようだ。そして、「失われた30年」という表記から、少なくとも2021年までは景気後退期であるといえる。その間、年金改革、雇用改革などが行われていることが見れる。全体的には悲観的な予想といえるだろう。

 

 ただし、筆者は「小さな政府」を理想とする人物である点には留意する必要がある。

 

3.感想

 未来予測はともかく、この物語の主人公たちは少なくとも「団塊の世代」の方々の過去と、そして肌感覚などを的確に表している。たとえば次のようなものだろう。

石田「若い奴らは俺たち団塊の世代を『年金食い逃げ」なんていう・・・大間違いや。俺たちはよく働いた。」

山中「年金の価値が減っても別に困らへんよ。みんなが貧しくなるんなら怖くないもの。・・・年金が減ったとか物価のわりに給与は上がらんとか言うけど・・・万国博のときよりはずっと上だよ。あの頃、万国博のころに俺たちは貧しかったか、生活に困ってたか。いやあ十分に面白かったよ。・・・みんながその程度で満足してた。いや今でも満足できるんや。」

第2話 p.90

 

「夫婦で真面目に務めたおかげで『金持ち、家持ち、時間持ち』になれた」というのがこの夫婦(大久保夫妻)

第3話 p.101

 

 個人的な経験で申し訳ないが、お会いしたことのある団塊の世代の方々(特に勤労者層)の方々からこういうお話をよく聞く。恐らく、団塊の世代の方々にとっては普通の感覚・・・といったところだろうか。

 

 ちらほらみられる若者についての言及も、たまに新聞等で見かけるから非常にリアリティがあり、面白い。

スポーツにしろ英語や数学にしろ、一生懸命やるのはごく少数、エリートやプロ選手を目指す生徒だけだ。近頃は高校生の間にも、

「どうせ生活保護でも暮らせるんだから、無理して勉強することもないよ。」

という風潮が拡まりだした。

第3話 p.141

 まあ若者は雇用流動化の煽りを受けたり年金減らされたりと途中経過は散々だがw

toyokeizai.net

 

 ただ、ここが堺屋太一氏らしいところだが、こういった自分の見解を小説内に登場させている。 

山中「家庭も地域も職場も、社会が崩れてしもたから、見栄も辛抱もなくなったんやな・・・」

 石田「われわれの若いころにはあったよねえ、その見栄と辛抱が。それをどうして、いつ、誰がなくしたのかねえ、この日本から・・・」

山中「それも・・実はわれわれやと思うよ。(略)そう、われわれ、団塊の世代だよ」

第2話、p.86

  さて、日本は今後どういった方向に進むのだろうか?

 一人の投資家として、一人の日本人として気になるところだ。