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Teploobmen’s diary

興味のあること、調べたことなど、雑多にまとめていきます。調べている内容の途中経過を書くこともあります。

共謀罪ー監視社会は既に出来上がっている

 (注:この記事は、筆者の憶測が多分に含まれています。また、推測が多いため、内容が乱雑になっています。)

  「テロ等準備罪」、所謂「共謀罪」が方々で騒がれている。

www.tokyo-np.co.jp

  組織的な犯罪の遂行に「合意しただけ」で犯罪捜査の対象となりかねないからだ。「一億層監視社会」になりかねないとも言われている。

 だが、私からすればこのような議論は今更すぎる。なぜなら、「監視社会」は既に構築済みであるためだ。そして、日頃流れるテロのニュースにも、そのような形跡がちらほら見られる。

 今回は、そのような観点からこの「共謀罪」に関して考えていきたい。

 

 ただし、本文を読む上では、私はこの「共謀罪」にどちらかと言えば賛成する立場であることを踏まえて頂きたい。

  また、色々とまとめた結果長文になってしまった。申し訳ない

  なお、コメント欄は誰でも書き込めるようにしてある。気軽に意見を聞かせていただければ幸いだ。

 

本記事の論旨

  1. 「監視社会」は既に出来上がっている
  2. 共謀罪」は特定機密保護法とセットで運用される可能性がある
  3. 既に「一般人が捜査の対象」になっている事実を認めないから議論がこじれる

 

 

 

1.変質する情報機関

1.1.すぐに特定される「関係者」の謎

 さて、導入として最近起きたロンドンでのテロの事例を見てみよう。この事件は、2017年3月22日14時40分頃、ウェストミンスター橋の歩道を歩く歩行者を車ではねた後、英国国会議事堂付近で降車し、居合わせた警官を殺害した後、射殺されている。

 この事件が起きた次の日のBBCの報道を見てみよう。

6箇所で7人の人物が逮捕されたと彼(マーク ローリー上級警察)が語った。

Seven arrests were made at six addresses, he says.

Westminster attack: 75-year-old man becomes fourth victim – as it happened | UK news | The Guardian

23 Mar 2017 07:46

 さて、時刻を比較して違和感を覚えないだろうか?イギリスでテロが起きたのは22日午後だ。なのになぜ23日朝までには射殺されたはずの犯人の関係者が特定できるのだろうか?しかも、記事には拘束された理由は示されていない。

 日頃から監視し、周囲の人間関係が把握した上でならばこの速度は納得できる。しかし、上記記事には「英当局が過去に過激思想との関わりで調査していたと明かした。最近は当局の監視対象ではなかったと説明した」と、過去には調査していたものの、監視対象では無いことが記されている。つまり、他の手段で犯人との関係性が特定されたことになる。

 

1.2.既に「監視社会」は出来上がっている

  結論から言えば、既に監視社会はアメリカを中心に出来上がっている。少し古い記事だが、次の記事を御覧いただきたい。

NSAや米連邦捜査局FBI)は通信大手のベライゾンやAT&Tから顧客の通話記録などを入手。米紙ワシントン・ポストなどによると、アップルやフェイスブック、グーグル、スカイプなどのIT大手のサーバーからも、電子メールや映像のデータを直接収集していた。

 通信記録の入手はブッシュ政権時代の2007年から始まった。テロ対策強化の一環で、機密扱いとなっていた。オバマ政権になって情報収集の対象が拡大されたもよう。

秘密裏の収集に批判強まる 米政府の個人情報入手 :日本経済新聞

 そう、我々の利用するメールなどのデータは、直接収集されている。しかも、オバマ政権でその流れは加速している。

 ちなみに、オバマ大統領は任期終了間際にこの収集したデータを令状なしで17の政府機関がアクセスできるようにしていたりもする。

japan.cnet.com

 

1.3.データの収集と活用の方法

 では、動画やメール、通話の記録データの収集とその解析はどのように行っているのだろうか。その内容を見るために、以下の本の内容を参照したい。

サイバーセキュリティと国際政治

サイバーセキュリティと国際政治

 

  上記の本によれば、まずメール本文や動画の内容、通話の内容までは解析していないらしい。

 メールの例を考えてみよう。もちろん、数件の内容だったら内容まで解析するのは簡単だろう。最近は所謂「人工知能*1も発達して来たことだし、GPGPUの発達なども相まってコンピュータの処理機能は大幅に向上している。だが、世界中でやり取りされているメールを内容まで精査するとどうなるだろう?

 例えば、普段のビジネスメールだと数十byteだろう。しかし、1年で流通するメールの量は、迷惑メールだけでも40兆通であることを考えると、このデータをいちいち保存しておくだけでとてつもない量になることは想像に難くないだろう。

 そして、この内容を解析するのも非常に難しい。何らかの規則性があるわけではないし、単なる挨拶文だけかもしれない。こういったデータの解析は技術上難しい*2

 しかも本文に計画がかかれているとは限らない。添付ファイルに書かれているとも限らないが、事前に打ち合わせをしており、実行の合図だけが送られているかもしれない。そう考えると内容まで解析するのは労多くして功少なし、であることがわかる。

 そこで、彼らは「ヘッダー情報」を収集し、保存している。これは、要するに「誰から誰へ、どんな方法で送られたか」を示す情報だ。これなら一定のフォーマットに収まっているため、データベース化しやすく、解析は容易だ。電話も同様の情報が収集されているという。

 さらに、IPアドレス、通話記録やキャッシュカード、クレジットカードなどの情報への足がかりにもでき、個人の特定や、最近の動向について探りやすくなる。さらっと恐ろしいことを言っている気もするが。

 また、この本によれば、通信記録を漁ることで、1人の容疑者が特定されたとき、複数の関係者を芋づる式に洗い出せると指摘されている。

 

1.4.小括

 つまり、最初に見たロンドンのテロの事例は、おそらく通信記録などをもとに容疑者を洗い出し、逮捕につなげたものと考えられる。これは「個人の自由」といった観点からみれば非常に危険な逮捕であったと考えられる。

 しかし、フランス・パリのテロでは、ベルギーに潜伏していたテロリストは次のテロを計画していたと報じられている。つまり、テロは連鎖的に起こる可能性がある。この可能性を除くためには、容疑者を早期に洗い出し、逮捕につなげる必要がある。

 

 

2.特定秘密保護法との関連

 では、この集められた情報について、特定秘密保護法との関係を考えてみよう。まず、このような情報は特定秘密保護法での保護の対象になることは明白だ。

 四 テロリズムの防止に関する事項
 イ テロリズムによる被害の発生若しくは拡大の防止(以下この号において「テロリズムの防止」という。)のための措置又はこれに関する計画若しくは研究
 ロ テロリズムの防止に関し収集した国民の生命及び身体の保護に関する重要な情報又は外国の政府若しくは国際機関からの情報
 ハ ロに掲げる情報の収集整理又はその能力
 ニ テロリズムの防止の用に供する暗号 

特定秘密の保護に関する法律 別表より

 また、自民党HPでも「機微情報を外国から最大限入手」する必要性を論じている。

 この「機微情報」は、産経新聞も言うように、HUMINTと呼ばれる人的接触を通じた情報も含まれるだろう。しかし、あくまで私の憶測だが「情報」という言葉を解釈すれば、ここには1.で示したような、通信記録の情報も含まれていてもおかしくないと考えるべきだろう。

 

3.「共謀罪」の目指すもの

3.1.森山副大臣の発言

 森山法務副大臣は、4月28日に次のような答弁をしている。

何らかの嫌疑がある段階で一般の人ではないと考える。 

嫌疑ある段階で一般人ではない 「共謀罪」で盛山副大臣 : 京都新聞

 しかし、東京新聞によれば、『テロ等準備罪を通信傍受の対象犯罪に加えるかどうかについて、金田氏は現時点では「予定していない」としながらも、「今後、捜査の実情を踏まえて検討すべき課題」と将来的には否定しなかった。』とある。

 さて、ここで問題にすべきはどのように「何らかの嫌疑がある」と考えるかだ。ここで、1.で示したような、日頃の通信記録などのデータベースで検索することで、「嫌疑のある人物」を特定すると考えると、辻褄が合う。

 

3.2.TOC条約との関係

 さて、「共謀罪」は「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(TOC条約)」を締結するために必要というのが与党の認識だ。

 民進党は「もともとマフィアや暴力団が行うマネーロンダリングや人身売買を処罰することを目的としてつくられた条約で、テロ対策とは関係ありません。」としているが、第五条を見れば当初の目的はとにかく、事実上テロ対策に直結することは明らかであるため、この指摘は当たらない。

第五条 組織的な犯罪集団への参加の犯罪ヵ

1 締結国は、故意に行われた次の行為を犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。

(a)

(中略)

(ⅱ)組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動または特定の犯罪を行う意図をしながら、次の活動に積極的に参加する個人の行為

a 組織的は犯罪集団の犯罪活動

b 組織的な犯罪集団その他の活動(当該個人が、自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に寄与することを知っているときに限る。)

(b)組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の実行を組織し、支持し、ほう助し、教唆し若しくは援助し又はこれについて相談すること。

2 1に規定する認識、故意、目的又は合意は、客観的な事実の状況により推認できる

国際犯罪防止条約 和文テキスト

 第五条第一項(a)(ⅱ)b、同項(b)が「共謀罪」に相当する部分だと考えるのが妥当だろう。また、恐ろしいのは第二項で、客観的な事実の状況があれば、犯罪の目的を認識していたかどうかを推認できる。

 ただ、通信記録はあくまで「犯人と連絡を取っていた」という事実を示すに過ぎず、合意等があった証拠としては不十分だ。だが、この情報があれば、即座に嫌疑のある人物を特定することはできる。嫌疑のある人物を洗い出すことができればそこから詳細な内容を精査し、逮捕につなげるかどうかを考えれば良い。

 

5.3. 小括

 以上を踏まえれば、共謀罪」を立証する「客観的な事実の状況」の証拠を得る前段階として、特定秘密保護法で守られている通信記録等を当てるつもりではないだろうかと考えられる。こうすることにより、仮に日本でテロが起きたとしても、イギリスのテロのようにすぐに容疑者が特定され、逮捕することができるようになるだろう。

 

5.4.既存の法律で対処できないのか

 さて、こうした流れを見て、「既存の法律で十分対処できるではないか」という意見もある。もちろん昔から。そしてもちろん、他の国でも。

 しかし、既存の法律は令状を取るまでのプロセスが必要であり、時間がかかりすぎる。また、こうした情報を用いず、他の証拠をもって容疑者の特定することもできなくは無いだろうが、やはり時間がかかる。

 個人の情報が収集されていることに関して、他の国でも問題視する趣はあるようだが、令状を取っている間に次のテロが起こってしまう可能性もあることを鑑みて、半ば社会からは黙認されている状態だ。

 日本ではまだテロらしいテロが起きていないため、この逮捕までの時間は問題にならないが、仮にテロが起きた場合でも、容疑者がなかなか捕まらない状態に、日本国民は耐えられるのだろうか。匿名の方より、既に日本はテロの被害にあっているというご指摘を頂いため、訂正いたします。

 また、仮にテロリストが法刑罰のゆるい日本で準備をし、海外でテロを起こしている、と言う状況になった時、どうなるだろうか。

 

4.「共謀罪」の議論はなぜおかしくなるのか

 各党の意見などを見ると、民進党共産党を代表とする野党は、一般市民が嫌疑の対象になることを懸念しているように見受けられる。それに対して与党は「一般の人に嫌疑が認められることはあり得ない」と答弁している。

 しかしながら、昨今のテロは、「今まで一般の人だった人」がテロを起こす点が問題視されている。さらに、上記の例を見ればわかるように「一般の人」であったとしても、常に情報が集積され、テロなどの重大犯罪を起こした瞬間にそのデータを解析し、関係者を洗い出せる体制が整っている。そして、それらは既に日常的に運用されている。

 つまり、これは「国際的に構築された監視社会」に仲間入りをするのか、しないのかという議論だとも言える。

 与党はこの状況をカムフラージュし、法案を通そうとしているがために、議論がこじれてしまっているのでは無いだろうか。

 ただ、仮に「既に一般の人も捜査の対象となっており、情報が収集されている」と答弁すれば与党への信認は失墜してしまい、この法案の成立は見込めなくなるかもしれない、というのが自民党が直面しているジレンマだろうか。

 

5.まとめ

 かつて、テロというと日本赤軍のように直接の人的接触によって感化された人たちが起こすものだった。しかし、テロリストたちは次第にインターネットを活用するようになり、テロリズムの思想に、動画などを通して「一般の人」でも感化されるようになった。こうした流れから、

 ただ、各党が指摘する通り、特定の思想などを取り締まる目的で活用されかねない、という可能性は否定しきれないのも事実だ。

 おそらく、「民主主義社会」と言うのはテロを巡って大きな岐路に立たされているのだろう。

 

 さて、そんな大きな「国際社会のあり方」なんてことは私だけで決められることでは無いからとりあえず隅におこう。まずは、日本国民として、この法案についてどう考えるかが先決だ。二項対立に持ち込むのはあまり好きではないが、私たちには2つ選択肢があると考えよう。

 一つは「監視社会」を事実上受け入れる、つまり「個人の自由」が侵害されることを容認することだ。テロを取り締まれる環境を整え、多少なりともテロの可能性が低くなるかもしれない。

 二つ目は、現状国際的な捜査組織をもってしてもテロを防げていないのだから、いまさら「個人の自由」が侵害されてまで捜査体制に協力する必要はないという考えだ。むしろ、多少テロが起きてもいいので、少なくとも*3日本政府からは「個人の自由」が守られている環境を是とするのもいいだろう。

 どちらを選ぶのも日本国民たるあなたであり、私の自由だ。

 

(参考)

共謀罪」の法案の全文を書き起こしてくださっている方がいたので参考までに紹介しておく。

www.shigo45.com

 

 

*1:そもそも人工知能」のくくりが不明瞭

*2:もちろん、今後技術の発展に伴って可能にならないとも限らない

*3:仮に、日本で「共謀罪」が否決されたとしても、米による情報収集は止まらないだろうが、少なくとも日本政府の「公式の立場」では個人の自由が保証されている。