Teploobmen’s diary

興味のあること、調べたことなど、雑多にまとめていきます。調べている内容の途中経過を書くこともあります。

【日本】インフレ率は上がっているが、デフレである

 一見矛盾したタイトルとなっているが、事実である。

 日銀の黒田総裁は、日本経済の先行きに楽観的な見方を示している。10日に行われた全国支店長懐疑の冒頭で、国内景気は「緩やかな拡大に転じつつある」と述べ上で、先行きは「緩やかな拡大を続ける」とした。消費者物価の先行きは「中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景にプラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていく」と語った。

www.nikkei.com

 だが、本当だろうか。日本の経済について検証していきたい。

 

 1.インフレ率

 まず、インフレ率を見てみよう。日本のインフレ率は、現状0.8%であり、緩やかではあるものの、インフレが進行していると言える。

 
source: tradingeconomics.com

 

2.GDPデフレーター

 だが、インフレが進行しているかどうかを判別する指標がもう一つある。それがGDPデフレーターだ。これは、数値を前年同期比と比較してプラスならインフレ、マイナスならデフレとする指数だ。では、日本のGDPデフレーターはどうなっているのだろうか。

GDPデフレーターは前年同期比マイナス0.8%だった。

1─3月期実質GDPは年率+2.2%、5四半期連続プラス成長=内閣府 | ロイター

  ということでデフレだ。

 この違いはなぜ起こるのだろうか?

 

3.原因

 まず、インフレ率が上昇した理由を見てみよう。ユーロ圏と同様、明らかに通貨安が影響しているといえる。


source: tradingeconomics.com

 

teploobmen.hatenablog.com

 

 その理由は輸入にある。まず、GDPデフレーターの計算式は、以下のとおりだ。

GDPデフレーター=\frac{実質GDP}{名目GDP}

 そして、名目GDPは次の式で表される。

GDP=消費+投資+政府支出+輸出-輸入

 では、それが何を意味するのだろうか?森永卓郎氏の記事を参照したい。

 いま、実質GDPが変わらないと仮定しよう。つまり、経済規模が本質的にまったく変わらない*1とするわけだ。そこで、「輸入」の物価が上がると何が起こるか。

(中略)

 「輸入」の額が増えているにもかかわらず、「消費」「投資」「輸出」が増えていない*2のだ。つまり、原材料価格の上昇が、製品価格に転嫁できていないのである。(中略)サラリーマンの可処分所得が減ったために、小売店が値上げによる客離れを恐れているからだ。

 (中略)

ところが、目の前では消費者物価が上がっているので、多くの人はインフレが起きていると勘違いしている。そこが大きなトリックになっている。たまたま原油穀物価格の上昇という、需給関係とは関係ないところでの物価上昇が起きたことによって、デフレが覆い隠されてしまったのだ。

一見インフレの現在の状況は、デフレである! / SAFETY JAPAN [森永 卓郎氏] / 日経BP社

 つまり、インフレ率は原材料価格などが上昇したにもかかわらず、可処分所得(賃金から税、社会保障を引いたもの)の増加が追いついていない。そのため、店側は客離れを防ぐために値上げをためらう、といった悪循環が起きている。

 この記事は、2008年ごろに書かれたものだが、現在でもこれを間接的に裏付けるニュースが出回っている。

 労働者の賃金の伸び率は低く家計の節約志向が続いている結果、川下産業は値上げがしづらくなっている。まさに、2008年ごろの日本経済に酷似した状況になっている。

 

4.結論

 すなわち、私達が景気の回復しつつ、インフレ率の改善が起きるには、物価の上昇ではなく賃金の上昇が必要だと言える。

 だが、世界的な利上げ傾向が続く中で、日銀が金融緩和政策をつづければ極度の円安となり、現在の状況を悪化させてしまうかもしれない。

 幸い、企業貯蓄は飽和しており、少なくとも大企業は賃上げ余地が大きい(中小企業は未だ厳しい状況だが)

www.nikkei.com

 安倍政権は現在苦境に悩まされているが、ここで賃金の上昇圧力をもたらす政策を行ってはどうだろうか?某支持率の上がらない野党の「実質賃金が(ry」といった批判もかわせる上、支持率の回復が起きて良いことづくめだと思うのだが・・・

 

*1:これは、物価の上昇率がほぼゼロだと仮定していることを意味する。つまり、実質GDP≒名目GDPが成り立つ状況を指す。ただし、ここでいう物価上昇率とは、CPIの計算に用いられるライスパレス指数ではなく、パーシェ指数を用いた場合が暗に考えられている。この問題については、こちらに詳しい

*2:森永卓郎氏は、本稿の中で「政府支出」と「家計支出」をあわせて「消費」と捉えているようである。