Teploobmen’s diary

興味のあること、調べたことなど、雑多にまとめていきます。調べている内容の途中経過を書くこともあります。

クルド人独立は新たな緊張を生む

(※複雑すぎてまとめきれていません)

 クルド人の長年の悲願が達成されようとしている。

 「国境を持たない民族」と呼ばれ、各地に分断され、差別されてきたクルド人だったが、ISILの攻勢によってイラク軍が撤退した地域を統治することで、イラク有数の石油産地まで手中に収め、ついに独立を志そうとしている。

 だが、この動きによって、中東は更に大きな戦争となるかもしれない。

 

 1.経緯

 そもそも、クルド人とはどのような人たちなのだろうか。「クルド語」という独自の言語を操り、イスラム教を信仰しているようだ。

 もともとは、オスマン・トルコ帝国の一部に暮らしていたが、第一次世界大戦に敗戦し、イギリス、フランスなどに領土を分割されたことで、民族は離れ離れになってしまった。

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1.2.クルド人の狙い

 クルド人の狙いは、おそらくイラク北部での独立にとどまらず、他の地域との統合を果たすことだろう。事実、シリア北部のクルド人地域「ロジャヴァ」は、昨年シリア国内で「道州制」を宣言し、シリア政府から反発を受けた。

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  トルコでは、クルディスタン労働者党(KPP) というテロ組織が存在し、現在も活動を続けている。

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 また、イランではイランクルド人民主党(KDPI)など、独立を志す非合法組織が存在している。最近は、イラク独立運動が波及しないよう取締を強化しているようだ。

 他にも、大小様々なクルド人が存在するが、過去の独立への方向性の違いなどからクルド人組織の中でも対立関係が存在している。また、クルディスタン地域にも独立を支持しないクルド人や、そもそもクルド人ではない民族などが入り乱れており、決して一枚岩ではないようだ。

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2.各国の反応

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 現状、周辺国、そしてアメリカとロシア両国がクルド人の独立に反対、又は懸念を表明している。しかし、イスラエルは唯一独立に賛成している。

 

3.渦巻く各国の思惑

3.1.各国の思惑

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(把握している限りの相関図。これでも簡略版だ)

 イラク、イラン、トルコの思惑はわかりやすい。独立運動が成功あるいは自国に波及すれば、領土が減ってしまうためだろう。イラクは切実で、2つの国際空港と、自国の10%の産出量を誇る油田を失ってしまうことになる。

 また、この記事を書いている段階で声明は発表されていないが、シリアも以前自国のクルド人自治区が独立することに対しては反対を表明していた。

 中東を巡って争っているアメリカ、ロシア両国が揃って反対を表明していることは興味深い。両国ともようやく安定化してきたこの地域が、これ以上不安定になることを望んでいない、といったところだろうか。

 逆に、イスラエルにとって、同じ「国を持たない民族」であったという同情の念があるようだ。・・と言うのはおそらく建前だろう。イランの力を削ぐことができるいう点で、イスラエルにはクルディスタン地域の独立にメリットがある。「敵の敵は味方」は外交の基本だ。

 また、アラブ諸国は、中東危機によって原油が高騰すれば利益を得られる、といった構造も見いだせる。 あえて緊張状態を放置、またはエスカレートさせるインセンティブがある。*1特に、サウジアラビアサウジアラムコIPOを控え、少しでも原油価格を釣り上げておきたいところだろう。宗派も、イラン、イラクではシーア派が中心であるのに対し、クルド人や、サウジアラビアなど他の地域ではスンニ派が中心となっている。

 

3.2.ひとまずは戦争回避か

 しかし、イラクが奪還しようとしているキルクークには、各国の企業が集中してい。ここには、ロシア、アメリカなど、様々な国が企業を進出させ、原油の権益を得てきた。仮に、ここを力づくで奪還しようものなら各国から激しい非難にさらされてしまう。イラクにとって、迂闊に手を出せない状態が続くと考えられる。また、一枚岩ではないクルド人組織を一つにまとめてしまう可能性もある。

 そこで、時間をかけることによって内部分裂する状況を待っているのかもしれない。 現に、空域の封鎖、銀行取引の停止など、経済的な制裁によってじわじわと追い込もうとしているようだ。

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 さて、クルド人はどのように手をうつのだろうか?通過に関しては、国境にとらわれない仮想通貨を使えば解決を図れるのではないかと考えている。では、地理的、内部的な制約はどのように解決するつもりなのだろうか?

 

3.3.戦争の可能性 

 一方、戦争の火種が消えたわけではない。仮に、トルコ、シリア、イラン国内で独立運動が過激化し、クルディスタン労働者党(PKK)などの武装勢力の活動が活発化すれば迷わず武力行使に至る可能性はある。現に、トルコは昨年シリアのクルディスタン地域が「連邦制」を主張した後、シリアへ越境派兵を行っている。この一連の動きから考えれば、仮に国内に飛び火すれば派兵を行う可能性はあるとも言える。

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4.まとめ

 この問題は、歴史的な問題、各国の経済的な問題、そして各国の軍事バランスへの思惑が絡み、新たな緊張を生み出すことになる。特に、クルディスタン地域と深い友好関係を持ち、イランと敵対するイスラエルの動向は注視したいところだ。

 また、地域が地域だけに、原油価格の上昇には備えておきたい。

*1:というかあのへんの王族がISISを支援しているという 噂もある